5月22日にブリヂストン社は、子会社ファイヤーストーン社が今後フォード向けタイヤ供給(北米)を打ち切ると発表して以来、業界に波紋を投げかけている。ブリヂストン社は会社を守るため、100年以上続いてきた歴史的なファイヤーストーン-フォード社の取引を止めるといる苦渋の選択をしたわけであるが、今後米国国民がファイヤーストーン社をどう見るのか、また世界的な大メーカーであるフォード社の他地域でのタイヤ供給(ブリヂストンブランドも含め)影響がでるのか、訴訟にどう影響がでるのかが注目される。
情報を整理すると、
1.フォードが昨年のエクスプローラ車の650万本のタイヤ交換(ファイヤーストン社が無償自主回収)に続き、1300万本のタイヤを、フォード社が無償交換すると発表。その交換費用は、3600億円(税引き前)となると発表。
FORD社の発表 ファイヤーストーンタイヤ問題の特別ホームページ
、 特に今回の1300万本交換プログラムについて
無償交換または$110-130/タイヤ一本のタイヤ交換報償金支払。
2.ブリヂストン社は、「今回の問題をすべてタイヤが悪い。フォード社の車は一切悪くない。またさらに1300万本の交換が必要」と主張するフォード社と、北米で今後取引と打ち切ることを決定。発表詳細は、こちらのBridgestone/Firestone,
Inc. Ends Ford Tire Business in the Americasss発表 (この中の5月22日発表声明に、フォード車のみに横転事故が多いデータやファイアーストーン社からフォード社社長宛の取引を中止する旨レターのコピーあり)
3.その他報道 ゴム報知新聞オンラインニュース
4.すぐさまGOODYEAR社は、ファイヤーストーンタイヤのシュアを奪うべく、Goodyear社の同等品タイヤ交換キャンペーンを始めた
5.同じくMICHELIN社も、同等品タイヤ交換キャンペーンを始めた
ブリヂストンにしてみれば、同じタイヤをGMやトヨタに供給しており、それらではクレームが発生していないこと。GMからは今年も6年間連続で、Supplier
of the yearの優秀サプライヤー賞をもらっており、今回の件は、フォード車のエクスプローラー車が他のSUVに比べてタイヤによる横転事故率が2倍高いことから、フォード社の設計にも十分責任があると考えられる。フォード社が消費者からの訴え、損害賠償から逃れるために、一切の責任はタイヤにあるとして、その責任をファイヤーストーン社に押し付ける戦略をとっているがそれから、会社を守るため、フォード社との取引をきることにより、反撃にでたと考えられる。
6.GOODYEAR社は先月まではタイヤ生産減産でレイオフを発表していたが、この1300万本の代替タイヤ取り替え特需で、生産量が急回復するであろう。またこの取り替えの為に世界の天然ゴムの年間需要の約1%の新規需要が、新たに発生したことになり、シンガポール天然ゴム相場は上昇いているとのニュースもある。なおGOODYEAR社他は3月にタイヤの値上げを発表している
7.今回、FORD社は、タイヤの無償交換を進め、3600億円の費用を負担する(ラバーステーションでは実際の費用は1000億円以下と予想)としているが、その一方でその損害をファイヤーストーン社に求めると考えられる。当然F社は支払を拒否し、訴訟になるが、訴訟審理の過程で、どちらがどのくらい責任があるのかが明らかになっていくであろう。その点はファイヤーストーン社の望むところであるのでは。
一方ファイヤーストーン社はブランドイメージの更なるダウンと他の車メーカーとの取引への悪影響が気になるところであろう。
以上 加藤事務所。
|
|