加藤事務所作成レポート

米国ゴム学会とゴム展示会 RubberMiniEXPO2000 取材レポート
  

平成12年10月21日           加藤事務所 加藤 進一

 加藤事務所では、2000年秋季米国第158回ゴム学会とゴム展示会に特派員を派遣した。現地の様子をレポートする。

1.米国オハイオ州シンシナチ市にて米国第158回ゴム学会と、ゴム展示会 ラバーミニエキスポ2000が2000年10月17日より20日まで開催された。

2.大会本部によると 学会、展示会参加者数は約2600人であり日本からの参加者は17名。全米よりゴム関係者が集まった。展示会ではゴム原材料とゴム機械、試験機メーカーの展示が多かった。

3.学会では 今回のテーマは熱可塑性エラストマー、エラストマー複合材、液体ポリマーと低ムーニーポリマー、材料開発、包装とハンドリングの最近の開発、パーオキサイド加硫、ゴムリサイクル等であった。あまり際立った技術発表はなかったというのが今年のゴム関係者全体の意見であるが、加藤事務所では、包装とハンドリングの最近の開発に注目した

4.全米からゴム関係者が集まるため、この機会に、ゴム関係の協会の委員会、ゴム関係の技術セミナー、各原料メーカーのレセプション等が同時に行われた。その中では ゴムリサイクル関係のセミナーが注目をあつめた。

5.ゴム展示会は、今年はミニ展示会の年であり、240社あまりの会社が展示ブースを開設していた。

6.ゴムリサイクル関係の展示が日本に比べて多い。学会でも20%ぐらいの発表はリサイクル関係である。米国自動車メーカーがめざしている目標(2005年までに自動車部品リサイクル率を80%に、2015年までに85%に、ゴムも例外ではない)を意識している。また同価格条件であれば自動車メーカーはリサイクル率が高い部品の方を購入するようになってきている。

7.今年は、ゴム学会で、米国ブリヂストン・ファイアストンの小野社長が基調講演を行うことになっており、業界人の話題になっていたが、小野社長が直前に社長辞任したため、講演は中止となった。やはりゴム業界人の現在の話題は、ファイアストン社にタイヤリコール問題である。どの業界人に聞いても、「この問題は原因を解明するのは大変難しい。まだ原因はわかっていない。また、今回フォード社に責任がかなりある。」という。また現地での情報によると「今回のファイアストンタイヤのセパレーションに原因は、タイヤ内部で疲労クラックがゆっくり進行し、ある時点でその疲労クラックが破壊限界の大きさまで達し、一挙にタイヤのはがれに至った。(ファイアストン社に依頼された第三者の専門家、カルフォルニア大学Govindjee教授の解説)」といわれているが、ゴム専門家を充分納得させる回答にはなっていないようである。つまりその疲労クラックの原因がわからない。またタイアコードとゴムの接着剤での問題ではなさそうである。

8.また展示会では、ゴム業界でのE-ビジネス(電子商取引)展開を示す発表、展示も多く、主なEビジネスでの業務開始の展示は、ElastomerSolustions.com社のゴム情報発信サイト、R.T.Vanderbilt社の受注サイト、CPHall社の受注サイトであり人気を呼んでいた。また大手業界新聞社Rubber&PlasticNews社でも11月にE-Commerceのセミナーを開く。Rubber&Plastic新聞社のSimmonds社長によるとこれからゴム業界でも自動車業界からの流れでB2Bの電子商取引が増えるであろうとのこと。なおElastomerSolutions.com社はAdvancedElastomerSystems, BayerCorporation, CabotCorporation, DSM Elastomers, DupontDowElastomers, Flexsys, Enichem, Polyone, UniroyalChemicals, ZeonChemicalsらの世界の大手ゴム原材料メーカーが出資して設立したE-Commerce(電子商取引)の会社である。

9.日本から出展会社は、イノアック、ダイキン工業、モリテック、島津製作所。

10.同業競合メーカー間での人の移動(転職)が多く、それらの人がこの展示会に参加するため、この展示会はいわば業界の同窓会のようなものでもある。

11.米国の景気もスローダウンしてきており、ゴム業界、タイヤ業界の製品出荷量も落ちてきている。自動車販売台数も落ちてきており、ゴム業界の景気はそれほどはよくないが原材料は原油高を背景にポリマー、カーボン等が値上げされてきている。

12.ゴム学会での論文発表で、「ゴム原材料の包装とハンドリング-最近の開発状況」のテーマでは、
 ゴム薬品大手のフレキシス社は、ゴム薬品の包装を従来の紙袋から、ポリ袋かフレコン(通いフレコン)に変更することで、買い手売り手双方にメリットがある。紙袋は、使用工場にて、破れからのコンタミ汚染、工場内環境汚染、残った袋の産業廃棄、作業性に問題あり、フレコンに変えることにより、トン4000円のメリットを生む。また樹脂パレットの使用も推薦。との発表。
 Drasner社では、各種低融点ポリ袋の比較を発表。PE,EXA、EMA、RB、およびメタルセン触媒を使った新オレフィンコポリマーでの各種の低融点ポリ袋の長所、短所を化学的に比較した。
 RheinChemie社では、予備計量済みゴム薬品混合物において、配合によっては混合ゴム薬品が袋のなかで反応してしまうため、低融点ポリ袋の中に内袋をいれ、Bag-in-a-bag方式で袋内での反応を防ぐ方法を解説。
 BAG社ではゴム原材料用に新型フレコンを解説。背丈が高いフレコンで、床面積当りの梱包量を改良、またドラム型、液体用フレコン、自立型フレコン、静電気防止型等を紹介した。
 なおこららの包装ハンドリング発表論文のコピーは、加藤事務所にて1テーマ2500円にてお買い求めできます。ご注文はこちらまで

13.展示会の様子はこちらに写真があります。クリックしてください。

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