1.平成12年3月29日にPRTR法が公布され、その後平成20年11月18日に改正され、現在 対象化学物質第一種指定462種、第二種指定100種、計562種については、その使用、環境への排出、工場外への廃棄について数量管理が必要になります。。対象化学物質は、大きく分けて揮発性炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等、有機塩素系化合物:ダイオキシン類、トリクロロエチレン等、農薬:臭化メチル、フェニトロチオン、クロルピリホス等、金属化合物:鉛及びその化合物、有機スズ化合物等、オゾン層破壊物質:CFC、HCFC等、その他:石綿等の化学物質です。
2.世界的に環境問題を解決しようという動きの中で、最近新聞等で報道されているように、産業界にて、環境汚染の疑いのある化学物質を自主管理しようという計画があります。これらの化学物質は取り扱いに適切な管理を怠ると、環境健康安全に悪影響を与えるおそれがありますが、そのリスクが不明で、一方すでに工業製品の生産のためには必要不可欠な物質も多く、そのため、企業は、使用禁止とするのではなく、そのかわりに、どのぐらいの量を購入し使用し、工場内から大気、排水、土壌に漏らし、または廃棄物として、排出しているかを、管理し、毎年記録し、
政府に報告することになり、またこの報告データは、地域住民からの請求に基づき会社名と共に公表されます。この制度が平成13年4月より始まりました。これをPRTR法(環境汚染物質排出管理改善促進法)といいます。
各企業は、至急そのための自主管理体制を作る必要があります。さらに環境省と経済産業省より、対象化学物質の管理指針が平成12年3月29日に告示されました。管理計画、作業要領の作成、教育訓練の実施、情報収集、設備点検、廃棄物管理、排出の抑制、使用の合理化、工程見直し、歩留まり向上、代替物質の使用、回収、従業員への情報提供の徹底等が指示されています。加藤事務所要約のこの管理指針はここをクリック。、一方ゴム工場向け
加藤事務所作成、ゴム工場でのPRTR管理チェック点はここをクリック。
環境省による、PRTR法での対象化学環境への平成13から昨年度までの排出量の公開のページはこちらへ すでに環境問題にうるさい米国、英国では、このような義務が法令化され、企業は、これら環境汚染の疑いがある対象化学物質を社内で記録し、
毎年環境庁に報告しています。
3.さて加藤事務所では、今回PRTR法で対象化学物質のなった562種の内、ゴム工場で使われている可能性が高い化学品をリストアップしてみました。
3-1 平成13年4月より、これらの化学品は、その購入量、大気や排水への排出量(生産工程中で揮発してしまうものも)、廃棄物として排出する量(バリ、混練り中のダスト量、廃棄ゴム)を社内で管理し、対象化学物質ごとに、環境への排出量、産業廃棄物としての排出量等を、都道府県に年一回(4月1日より6月30日の間に)報告、届け出(指定用紙、フロッピーディスク、CR-ROM、オンラインでアップのいずれかの方法で、窓口持ちこみ、郵送またはオンラインサインアッップ)する作業が必要となります。この報告排出量は地元住民の請求により、会社名と共にその排出量が公開されます。
¥1090で全国全ての報告書がCD-ROM交付されます。この届出書別紙の記入例1
本紙記入例2、別紙記入例3 はこちら。届出書の記入要領はこちらに。届け出窓口はこちら (pdf版) 。記入すべき業種コード表はこちら。(ゴム製品製造業のコード番号は、2300)
平成19年度の届け出(環境への排出量と廃棄量)の集計が公開されています。概要はこちら。 ゴム製品製造業では326工場が届け出し、合計で12292トンの環境への排出があり、大気に9909トン、河川に41トン、土に0トン、廃棄物として2338トン、下水道に4トンでした。公開データに入手方法は、こちら。 ゴム工場からの対象排出物質の80%はトルエンでしたが、それに続きキシレン、エチレンクロライド、可塑剤DOP,ウレタン原料、フロン、促進剤CZでした。これらもゴム工場全326工場から報告されたデータ-は、化学物質別、会社別にまとめて株式会社加藤事務所より有料にて配布しております。ご要望の方はこちら。
3-2 またこれらの化学品、及びこれら化学品が含まれている中間製品や原料(例えばゴム原材料やゴムマスターバッチ)の販売、出荷にはMSDS(安全データシート)を作成、発行することが義務付けされ、特にマスターバッチは品によってゴム配合が異なるため、それぞれの対象化学品量を計算する必要があり、その作業はかなり大変な作業になりそうです。
現在米国ではゴムマスターバッチメーカーはゴムマスターバッチ中の亜鉛量や対象加硫促進剤量を配合ごとにMSDS(安全データーシート)にて明記し、マスターバッチユーザーに毎回提出しており、またユーザーは、対象化学品別の集計購入量を米国環境庁に毎年報告しています。
3-3 今回決定した日本のPRTR法では、工場内の原料、中間製品、完成製品中にこれらの指定化学物質(第一種)が1%以上(発ガン性が疑われる特定第一種指定化学物質は0.1%以上)含まれている物は、すべてその対象物となり(注A)、(第一種指定の対象物の量)
X( 含有%)の合計を出し、いずれかの指定物質で、その値が各工場当たり年間1トン以上、(特定第一種指定化学物質は年間0.5トン以上)になった場合に、上記の地方自治体への報告義務は発生します。通常ゴム工場ではDOP,加硫促進剤TT、トルエン等は工場で年間1トン以上は使っていますから、 ほとんどのゴム工場では自治体への報告義務が発生するでしょう。工場内の原料(ゴムマスターバッチを含む)、中間製品中の下記の化学物質の含有量が1%以上であるかをいちいち配合表に従って調べ、かつピックアップした後、積算し、かつその排出量や廃棄量を測定、計量、推定計算するという、大変な作業が必要になるでしょう。環境省による、排出量算定マニュアルはこちらへ(ゴム工場にはあまり適用できませんが)。
3-4 但し、ゴム製品製造工場の場合は、会社当りの常用雇用者数が20人以下の小規模工場については、その報告義務を免除します。しかしかなりのゴム会社は社員数(パートを含め)21名以上であると考えられ、多くのゴム工場がこのPRTR法により、毎年自治体に届出書(報告書)を提出することになります。一方
MSDSの作成、交付については、相手会社の人数の関係なく、作成交付義務があります。よってゴムの原料メーカー(マスターバッチメーカーを含め)は、この対象化学品を含んでいる化学品(マスターバッチも含め)を販売する場合、必ずMSDSを作成し、すべての販売先に送る必要があります。MSDSには対象指定物質(第一種、第二種、特定指定物質)ごとに物質名称、その含量%(上位二桁の有効数字)を記入することが必要です。
MSDSの作成方法、配布方法は平成12年12月22日の通産省省令で決まっています(詳細はここをクリック)。マスターバッチでは、配合ごとに別々にMSDS(または、MSDSの別紙の形で)を作成する大変な作業が必要となります。マスターバッチのMSDS作成例(ここをクリック)。なお 労働安全衛生法も改正され、 632種類の化学物質(ここをクリック)についてはMSDSに明示する必要があり、酸化亜鉛、カーボンブラック、プ
ロセスオイル、ホワイトカーボン等も対象になります(ここをクリック)。また平成13年1月より毒物及び劇物取締法が改正されて、毒劇物の対象化学物質は、MSDSへの記載が義務化されました。これについての解説はここをクリックしてご覧いただけます。
3-5 なおここでいう、環境汚染の疑いのある対象化学物質とは、すでに環境庁が発表しているの合計562種を指します。社内で検索しやすい様にCASNo.に並べ替え、ゴム工場向けに用意したこの562種の化学品のリスト(CAS No.順)は、加藤事務所でも用意してありますので、郵送やメールにて送付ご希望の方は、メールにて加藤事務所にお問い合わせくださるか、電話03-5645-8670までご連絡ください。
3-6 加硫後の「ゴム」はこの対象化学品のリストに載っておらず、また取り扱い中に液体化、気体化、粉体化せず、PRTR法の特例により、完全に加硫したゴムはこのPRTR法の対象外と考えてもよいでしょう。しかし、可塑剤DOP等は、加硫ゴム中で、反応して別の化学物質になったとは言えず、またガスケットNBRゴム製品のように、使用中にゴム中から可塑剤が外に出て(ブリードする)、外の環境にもれる可能性や含油NBR等ブリードすることが目的である製品等を考えると、一部の加硫済みゴム製品は、このPRTR法の対象になってしまう可能性もあります。
すると、ゴム会社にてゴム製品に対してもMSDSを作成する必要がでてきます。(配合によって対象物質の量が違うため、数多くのMSDSを作成することになります。)またそのゴム製品を使う会社(例えば自動車メーカー)も、
ゴム製品をPRTR法対象化学品として管理する必要が出てきます。(但し、個人の消費者は、PRTR法の対象外です。)これらの点は十分検討してください。
3-7 支給品のケース:あるゴム会社が、ゴムマスターバッチを社内で製造し、それを、下請けのゴム加工(加硫加工)会社にマスターバッチで支給(有償でも、無償でも)する場合は、親会社は、下請け会社に対し、MSDSを作成し、渡す必要があります。さもないと、その下請け会社は、その工場内で使用する対象有害化学物質がわからなくなってしまいます。この支給が、有償でも、無償でも関係ありません。
注A:対象指定化学物質が1%以上含まれていても、以下の物は、対象外とする。
1.事業者による取り扱いの過程において、固体以外の状態にならず、かつ、粉状又は粒状にならない製品(例:フィルム、パイプ、組立部品等。しかし未加硫ゴムマスターバッチは、加硫時には、ゴム全体が液体化し、かつゴム薬品の一部が解けたり、オイル可塑剤等の製品の一部が、気体になるので、この項目により、PRTR法対象外であるとは言えない。)
2.第一種指定化学物質が密封された状態で取り扱われる製品(例:コンデンサーの中の化学物質等)
3.主として一般消費者の生活の用に供される製品
4.再生資源(例:リサイクルのために売却される製品。種々雑多の混合物)
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