加藤事務所 ポリマーダイジェスト誌
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.平成15年1月号コラム
 タイトル: 近頃、元気のよいゴム会社

近頃、元気のよいゴム会社とは、どんな会社かと調べてみました。元気がよいとは、安定した利益を出している、利益が増えている、新製品を出している、あたらしい技術を開発している、工場の生産がいそがしいといろいろな定義があるでしょう。

利益を多く出している会社は、その製品群での販売シェアーの多い会社です。販売シェアーが多く、業界No.1ということは、やはり独自の技術をもっており、また秀でた製造技術で生産コストを安くできるということかもしれません。タイヤのブリヂストン、東海ゴム工業の防振ゴムと燃料ホース、フコクの自動車用ワイパーゴム、NOKのオイルシール、興国インテックのハードディスク用ゴム部品等がそれらの事例かもしれません。これらの会社の製品は、独自の配合と生産技術で、他社の追従を許さない製品であり、他社より数年先の技術を採用していると言われています。フコクの自動車用ワイパーゴムは、日本でのシュアーが、新車装着率でほぼ100%、世界でのシュアーが30%を超えています。国内でどの新車を買ってもフコクのワイパーゴムがついてくることになります。その秘密はガラス面から水のふき取り技術、耐久性と卓越した生産技術で、市場価格からみると信じられないような低コストでワイパーを製造しています。これでは二番手のメーカーが出てこられません。さらにこの方法で、世界のワイパーゴムのシュアーをとるべく、次の目標をかがげているようです。東海ゴム工業の防振ゴムも金具から自社製造できる体制を引き、同時に安く金具を調達しているようです。また防振の技術ではブリジストン、東洋ゴム工業としのぎをけずっており、東海ゴム工業はそれにトヨタ向けの強い販売力を武器に、コストと技術で大きなシェアーを持っています。NOKのオイルシールは、そのシールの番号が一般的なゴムシールの番号として認知されるようになっているように高いオイルシールのシュアーをもっており、それを武器に販売力を強化しています。もちろん、なぜオイルが漏れないか、どういうメカニズムでシールするか、シール部に負圧でわざとオイルを漏らし、循環させているといった基礎研究もその技術力をバックアップしています。興国インテックは、他社が参入し、価格競争がはじまったらその製品には会社にとって魅力がない。価格競争に巻き込まれるようになったら、他社にその市場を渡し、その先をいく他社が手がけていない分野の製品を次々に開発していくという独自の会社方針を持っており、売上額は日本一ではありませんが、利益率日本一を目指しています。この様に独自の技術と生産を組み合わせてNo.1の販売シュアーをもっている企業は元気があります。

 また実績のもとづいた製品管理が市場で認められ、業界で有名な製品になるケースもあります。藤倉ゴム工業のダイアフラム、横浜ゴムの航空機部品、阪上製作所のパッキング、櫻護謨の消防ホースなどがその例でしょう。これらは数十年の実績があり、他社の製品がなかなか競争できなくなっています。数十年にわたり品質管理を維持し、かつ新しい開発を絶え間なく続けることによって、製品での使用実績というこの種の製品にとって大切なアドバンテージを得ているのです。

 自動車ゴム部品メーカーにとっては、系列に入るかどうかは重要な問題です。ゴム企業にカーメーカーの資本が一部はいり、いわゆる系列メーカーになると、受注はある程度確保されますが、絶え間ないコストダウンの要求、親会社からの人の派遣、あまり儲けさせてもらえない等も課題もあります。一方カーメーカーが持っているゴム製造以外のすすんだ技術や生産技術が応用でき、また数年先の開発計画を見通して仕事ができます。最近ではカーメーカーが元気がよいと、系列ゴム部品メーカーも数量増でコストダウンができ、また利益も出せるようになります。トヨタ系列、ホンダ系列がここのところ調子がよかったようです。ゴム企業では山下ゴム、豊田合成がその例でしょうか。また逆にブリヂストン、NOK、西川ゴム工業のようにどの系列にも入らず、またどのカーメーカーにも販売できるという戦略をとっている会社もあります。

 元気なゴム企業は海外進出も活発です。米国、アジア、欧州、中国に生産拠点をつくり、コストの安い場所で作る。カーメーカーの工場があり車の需要があるところに生産拠点を設けるのです。日系ゴム工場の数は、230を超えました。最近では、海外の同じゴム企業とアライアンス(同盟、相手先の工場で自社製品を生産してもらい、お互い生産拠点を補間すること)を組んで、東ヨーロッパ、中南米、インド、中近東といったなかなか海外工場を持つことが難しい地域で同じ製品を委託生産する方法を用いているゴム企業もあります。NOK、フコク、東海ゴム工業が海外ゴム企業とアライアンスを組んでいます。海外進出を進めていくためには本体の会社に十分な利益とはっきりとした将来計画があることが必要ですが、海外要員の人材、本社のバックアップ組織、そして会社トップの判断が海外事業の成功を左右します。

従来のゴム技術だけではなく他の技術を複合化させゴム製品の殻を破ろうとしている会社も元気のよい会社の証拠です。ゴム、エラストマー、樹脂のポリマーアロイ、 ゴムと導電材料、ゴムとプラズマ加工、液状ゴムと印刷技術、防振ゴムとブレーキ装置の一体化、ゴムからTPE、樹脂化、ゴムと金具接着一体化、エアバック製造等いままでの製品群の枠を取り去りゴムの技術を発展させ異なる分野に進出しているのです。当然そのマーケティングは大変でしょうが、企業としてはその活力が目立ちます。

また豊田合成の青色ダイオード、NOKのフレキシブル回路シート、東海ゴム工業のデザインコンクリート板建材等もゴム技術とは全く異なった分野での開発が成功して例でしょう。

 この時代、販売数量やコストが毎年きびしくなってきています。その中で独自の戦略をもって希望をもって大胆に行動すると、元気のよい会社になります。行動しないことには何も始まりません。元気のよいゴム企業になるためにお互いがんばりましょう。


加藤事務所では、ラバーダイジュスト社発行の月刊ゴム・プラスティック関係の総合技術誌「ポリマーダイジュスト」に、「ラバー情報ステーション」のタイトルで、ゴム業界に関する情報コラムを平成14年5月より連載しています。連載後6ヶ月を経たコラムはここに公表しております。最新号の記事は、ラバーダイジュスト社よりポリマーダイジュスト誌をお買い求めください。(ラバーダイジュスト社 電話03-3265-4840)

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更新日2003/07/11
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