.平成14年11月号コラム
タイトル: 台湾のゴム機械メーカー
今回は先月出張で行ってきました台湾のゴム機械メーカーのお話します。
台湾のゴム混練り機械の製造会社であるニーダーマシナリー社とゴムのインジェクション成型機械の製造会社であるジンダイ機械工業社に行って来ました。共に従業員数30~40名の中小企業でありますが、台湾を代表するニーダーミキサー及びインジェクション成型機のメーカーです。この2社ともすでに中国大陸に進出し、無錫の近くに分工場を持っています。
ニーダーマシナリー社は年間100台以上のニーダーミキサーを生産し、その他シートプレフォーミングマシンSPMやバッチオフマシン、フィーダールーダーFRの生産も手がけています。東南アジアでは、このニーダーマシナリー社製ニーダーミキサーのマーケットシェアが大きく有名です。その実力は日本メーカーのレベルに近く、かつ3日に1台づつニーダーマシンを出荷しているという量産生産に特長があり、コストダウンをはかっています。具体的に言いますと、部品点数を減らし、組み立て部品は多量に安く発注し、また外注部品をうまく取り入れて組み立てをしています。さらにその主な電気部品については、例えば三菱電機のタッチパネルスクリーンを使ったり、リレー部品はオムロン、温度制御器は理化工業、空圧バルブはSMCといったように、かなり日本製の部品を標準機で使用しています。信頼性があるという理由と、アジアではこれらの部品の補修部品が入手しやすいということで、日本製の電気部品、空圧部品等が使われており、これが日系メーカーにとっても魅力となります。減速機とモーターは台湾製が標準ですが日本製のモーターでも作れるということです。ポイントとしては、このニーダーマシンを使う国で補修部品が入手しやすいメーカーのものを使っているということです。
販売方針を聞くと、中国人のネットワークをうまく活用し、東南アジアを中心に販売しているようです。日本、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカにもかなり輸出をしています。かつて日本のニーダーメーカーにいた人を会社幹部に迎え、日系メーカーにも今後積極的に販売していくということです。台湾本社工場自体は40人ほどですが、すでに中国無錫市の郊外に子会社の工場をかまえ、中国工場では100人ほどでニーダーミキサーを生産しています。国境を越えて市場があるところで、どんどんニーダーミキサーを生産しているという印象を受けました。社長と話をしていて気がつきましたが、実にバイタリティーがある会社で、見よう見真似でコピー製品を作る時代は終り、常に自社開発品で新しい機能を組み込んだ機械を生産している。そして中国に進出し、どんどん市場を開拓していくという戦略でした。例えば今後日本から中国に進出する日系ゴム企業が、中国工場でのニーダーマシンの設置を考えると、このような機械メーカーがあるということは心強いと思います。価格的には日本のニーダーより安いのですが、よく聞くと日系向けの仕様ですとかなり日本製の部品が多いので、東南アジア向け仕様のものよりは高くなります。しかしメンテナンス等を使い勝手を考えますと、このように日本向け、日系工場向け仕様のニーダーマシンが台湾及び中国で生産されているということはポイントになると思います。
もう一つのメーカーはジンダイ機械工業というインジェクション成型機のメーカーです。こちらも年間300台のインジェクション成型機及び真空プレス成型機を生産しており、同じく中国の無錫に分工場を持っております。工場を見ると10台以上のインジェクション成型機を組み立て中であり、なかには三菱電機製をはじめ、かなりの日本製の部品をとりいれて組み立てしています。日本の三友工業製ゴムインジェクション成型機の仕様にそっくりなインジェクション成型機も生産していました。タッチパネル式スクリーンでは日本語での表示も可能との事。こちらの会社は社長と副社長が兄弟で、兄は中国工場に駐在し中国工場の運営に頑張っており、弟が台湾工場を運営しています。日本語で出来た会社紹介ビデオをすでに持っており、世界中のゴム展覧会に出展しているそうです。
これらの会社を見学して気が付く事は、共に台湾のメーカーはいわゆる華人、中国人のネットワークをフルに活用しその機械を販売しているということです。つまり台湾国内だけではなく、東南アジアに広がる中国人経営のゴム企業を中心に販売をしており、さらに国を越え中国本土に進出し、中国本土に子会社を作り、組み立て工場を作り、中国国内向け廉価版のゴム機械も生産をしています。現在全体の販売量の半分以上が中国市場向けだと聞いており、その大量生産の量産効果で部品のコストダウンをはかっています。韓国にも日本にも、もちろんゴム機械メーカーはありますが、韓国製のゴム機械が東南アジアでよく売れているという話はあまり聞きません。やはり中国人が作った機械はその中国人ネットワークで東南アジア全地域に販売する、そしてその量が大きい。結果としてコストダウンをはかれるという台湾企業のメリットを十分に生かしているというように感じました。
この2つの会社ともインターネット上の会社のホームページが充実しており、聞きますと世界を相手にあちこちの国からインジェクションマシンやニーダーマシンの引き合いが舞い込むそうです。すでに中国語、日本語のホームページを持っています。
ものまねでコピー製品を作る時代は終り、どんどん良い物を取り入れて開発に力をいれ、そして相手の国にあった部品で機械を組み立てていくと、そういった力強さを感じました。中国人のパワーそして台湾人のパワーを見せつけられた数日間であり、この中国人ネットワークという巨大な商売のビジネスがそこにありそうです。さらに良い物はどんどん取り入れていく、そして中国進出に対してもリスクはありますが、そのリスクを十分考慮し、リスクを負担した形で中国進出を進出を計り、そして市場にあったものを供給していくという、それがたった数十人の中小企業がやっているというところに驚きを感じました。来月は韓国に行ってきます。今度は韓国のゴム関連企業について報告したいと思います。
加藤事務所では、ラバーダイジュスト社発行の月刊ゴム・プラスティック関係の総合技術誌「ポリマーダイジュスト」に、「ラバー情報ステーション」のタイトルで、ゴム業界に関する情報コラムを平成14年5月より連載しています。連載後6ヶ月を経たコラムはここに公表しております。最新号の記事は、ラバーダイジュスト社よりポリマーダイジュスト誌をお買い求めください。(ラバーダイジュスト社 電話03-3265-4840)
更新日2003/07/11
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