加藤事務所 ポリマーダイジェスト誌
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.平成14年12月号コラム
 タイトル: 韓国のゴム関連会社

10月に韓国のゴム関連会社に行って来ました。今回は中堅規模のゴム成型メーカーとゴム薬品の工場を訪問しました。共に100人くらいの会社ですが、どちらの会社も元気がよく韓国国内とアジア圏内を相手に色々と活発に仕事をしています。
 まず気が付いた事は、韓国は景気が良いということです。経済成長率が昨年度は年率6%の成長で今年も5%以上と言われています。今年はサッカーのワールドカップとアジア大会の2大スポーツ大会を成功させ、自信を持って国と経済が発展していることを実感しました。ゴム製品の生産も順調に伸びており、仕事は結構忙しいという会社幹部のコメントがありました。街は人出でごった返し、活気にあふれ、数年前に、国の経済が行く詰まりIMF危機に陥った国とは思えません。もっとも韓国情報通によると「今の韓国人には、目的意識が薄れた結果からか、いわゆるハングリー精神も少なくなり、楽をして生きていこうとする人間が増えてきた。IMF危機以降、貧富の差が拡大し、お金持ちは楽をして更に大きな富を築き上げられるようなシステムとなった。この結果、多くの人々が夢を持って、額に汗して働く楽しさ、遣り甲斐といったものを忘れ、効率化という耳あたりの良い言葉の中で努力をする人間が少なくなってしまった。これでは、人材以外に大した資源を持たない韓国には、中長期的な将来に不安が生じてしまう。なんとか、今のうちにこうした社会を元に戻していきたい。」との意見が韓国知識人からでているとのことです。
さてその次に気が付いたことは、中小企業までが韓国国内のみならずアジア圏を中心とした世界で仕事をしているという事実です。1日目にはゴム薬品メーカーの工場を見学しました。その会社の2代目社長はまだ40代と若く、米国での生活経験もあり、欧米流の考えで会社の発展すべきベクトルをしっかり見据えて、経営を引っ張っているという感じがしました。この会社の製品は、韓国国内のみならずアジアを中心に輸出されており、また、一部はオーストラリアのメーカーの製品を、この会社の工場でOEM生産し、北アジアで販売をしているとの事でした。さらに、一部のゴム薬品は、中国の一流ゴム薬品メーカーから輸入し、異物を取り除くためにふるいにかけ、それをこの会社が自社ブランドとして販売をしていました。またゴム薬品の原料は、韓国国内のみならず日本や中国から積極的に輸入をしていました。つまり原料も製品も韓国国内だけでなく、アジア各国からベストの品質、ベストの価格で入手し、そしてこのアジア圏内に販売し商売をしているということです。
 2日目に訪問した会社はゴム製品メーカーですが、この会社でもゴムコンパウンドの原料は、例えばSBRは台湾と中国から、再生ゴムとホワイトカーボンは中国から、ステアリンサンはマレーシアからと、どんどん輸入品を取り入れています。アジアで売れるような製品を作るためには、コストも安くしなければなりません。その為に、アジア中を探して安くてよい物を選んで、メリットのあるものはどんどん取り入れていくという姿勢に感心させられました。確かにこの会社のゴム製品の品質は、日本欧米から比べると1.5流ないしは2流品かも知れません。しかしその販売市場がアジアにあり、その市場がコストを抑えた製品を望んでいるのであれば、そのマーケットをしっかり見据えて、その市場に一致する製品をつくる仕事をしています。100人以下の中小企業までが、アジア市場を意識しそのために原料から製造工程までを見直し、コスト削減に努力しています。日本の中小企業では、そこまでアジアからの輸入ゴム原料を使いこなしているケースが少ないかもしれません。日本では、例えば中国製ゴム材料といいますと、安かろう悪かろうというイメージがあります。しかしこの韓国のゴム製品メーカーは、その中国品をいかに使いこなすかが重要だという事を教えてくれました。
 最近私はアジア製のゴム原材料に興味があります。今まで調査してなかなか面白いと思ったものの一例として、中国のゴム薬品(異物が多くふるいがけが必要です)、韓国のゴム薬品、マレーシアの加工助剤、マレーシアの再生ゴム、台湾のSBR、NBR、韓国のEPとカーボンマスターバッチ、タイのカーボン、台湾のゴム機械、インドネシアのクレー充填剤、タイや中国にある日系ゴムメーカーのゴム製品があります。これらのゴム製品、ゴム材料は日本にはまだそれほど多く入ってきていませんが、アジア圏のゴム企業を訪問してみますと、これらのゴム原材料が広く使われています。もっとアジア製のゴム原材料に目を向けるべきかもしれません。私の会社では最近、中近東のブチルゴムチューブのスクラップ品までも扱っています。ブチル再生ゴムの原料であるブチル製のタイヤチューブはもう日本では発生量が少なく、チューブ付タイヤが今だ主流である東南アジア,インド、中近東から発生する回収チューブスクラップを集めて日本にもってきているのです。
 これらのゴム原料は、アジア圏のゴム原料としては注目すべきものであり、そしてコスト競争力があり、品質もそこそこで十分使える材料だと思います。欧米の一流ブランドのゴム材料も、実はその中国工場で生産され、日本を含めたアジア各国で販売されているケースも多いようです。
 アジアでは1ドルバッチというカーボンマスターバッチがあります。EPバッチもNBRバッチもSBRバッチもすべて1キロ当り1ドルだというのです。(1キロ130円もバッチです。)もちろんこの価格には工場からの輸送費が入っていませんので、カーボンマスターバッチメーカー工場出荷価格でありますけれど、しかしこの1ドルバッチという、日本に比べますと大幅に安いゴムマスターバッチが流通し、それをベースにゴム製品が作られているのです。ちなみにクロロプレンゴムの1ドルバッチという話も聞きましたが、これは相当マガイ物でどうもSBRか天然ゴムバッチに塩ビの粉末を混ぜているという代物でした。
 今、世の中はどんどんボーダーレスになっています。特に日本企業はその企業活動の中でアジアでの活動が占める割合が段々高くなってくるでしょう。日本のタイヤメーカーも中国でのタイヤ生産を本気で進めています。その中で日本のゴム企業が、品質は高品質、ただし値段も超一流という製品だけでなく、アジア市場のために、とにかくコストを優先させた製品を作るということも益々大事になってきています。そのためにはゴム企業はどうしたらよいか。韓国企業の方がこの点で先を行っているのでは?とこのように考えた一週間でありました。




加藤事務所では、ラバーダイジュスト社発行の月刊ゴム・プラスティック関係の総合技術誌「ポリマーダイジュスト」に、「ラバー情報ステーション」のタイトルで、ゴム業界に関する情報コラムを平成14年5月より連載しています。連載後6ヶ月を経たコラムはここに公表しております。最新号の記事は、ラバーダイジュスト社よりポリマーダイジュスト誌をお買い求めください。(ラバーダイジュスト社 電話03-3265-4840)

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更新日2003/07/11
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