加藤事務所 ポリマーダイジェスト誌
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.平成14年8月号コラム
 タイトル: グローバル化とゴム会社

今回はゴム会社のグローバル化についてお話したいと思います。ここ15年間の間に日本のゴム会社は世界中に数多く工場を作ってきました。最近発行された「ゴム企業海外進出総覧2002」を見ると、北米に50社、中国に60社、東南アジアに90社、欧州に10社程、日本のゴム会社の工場が進出しています。更にタイヤ会社を見ますと、既にブリヂストンはファイアーストン社買収した事により世界各国に数多くの工場を持っており、横浜ゴム、東洋ゴム工業、住友ゴム工業もアジアを中心に工場を運営しています。海外進出は、それだけ苦労の多い事業だと思いますが、結果として、多くの成果を出しているようです。最近自動車メーカーはグローバル調達を強化しており、又世界のどの地域でも同じゴム部品が供給出来るようなゴム会社との取引を増やしています。その為にも日本のゴム会社が世界各地に工場を作り、又は補間しうる欧米のゴム会社とアライアンスを組み、北米、南米、ヨーロッパ地域、アジア地域において、同じ部品を自動車業界に供給出来るよう体制を整えつつあります。
 歴史的に見ると、20年前には韓国、台湾に数多く進出しました。そして、15年程前からアメリカに約30社の日系ゴム工場がスタートしました。更に7,8年前からはタイを中心とした東南アジアに進出が進み、そしてここ1,2年は中国への進出がブームになっています。その進出事情を見ると、自転車、オートバイタイヤのようにそのメインの市場がどんどん日本からアジアに移っていったケースがあります。又自動車部品のように、北米、タイ、ヨーロッパそして最近では中国という様にそのトヨタ、日産を中心とする自動車工場が世界各地でスタートし、それに伴い自動車ゴム部品メーカーも各地域で同じゴム部品を製造始めています。また安く現地で作り、その部品を世界の他地域に輸出するという動きも、タイ、中国、インドネシア工場を中心に起こってきています。小物部品だけでなくラジエターホース、ウェザーストリップのような大型部品までもそのような動きがあります。ゴム練り工場もその成型メーカーの進出の後を追って各地に工場を作っています。JSR・エラストミックスの例を見ると、かつては台湾、韓国、そして、北米に更にタイ、最近では中国に、そのゴム練り工場を拡張進出しています。
 材料から見ると、日本からA練りで持って行き、現地工場で、促進剤を入れてB練り化する方法、ないしは現地の日系ゴム練り会社から、マスターバッチを購入する方法、更に、現地の工場で自社練りをし、ゴム材料を調達する方法と、幾つか多様化されています。苦労している点は、やはり日本の配合表と同質の材料がなかなか手に入らないという事です。ポリマーについて言いますと、ほとんどの類似グレードは、バイエル、DSM、EXXONを中心とした世界的なポリマーメーカーから世界各国で入手出来ますが、低グリッドのカーボンブラック、一部特殊可塑剤、更に加工助剤についてはなかなか同等品が無いため、苦労しています。充填剤もアジア地域での充填剤は、けっこう異物が多く精密部品では使えないようです。
 ゴム成型機械についていいますと、当初は日本から機械を持って行きましたが、工場が各地域でスタートすると、現地製の機械ないしは、最近では台湾製のゴム機械を購入する事が多いようです。台湾の加硫プレス、インジェクション、ニーダー、ロール等も、例えば、制御盤は三菱電機のタッチパネル式の物や、日本製油圧機器を使用しているというように、信頼性が高くなってきています。一般的にいいますと、価格は日本製の3割安で、更に日本のゴム機械会社と提携し、設計、据付工事、試運転は日本の会社が責任を持つといった、いわばハイブリッド型の台湾製ゴム機械も増えてきたようです。
 配合設計からいいますと、配合をコピーされない為に、日本からA練りの部分を持って行き、現地では促進剤入れだけをするといった事も考えられています。世界で入手可能な共通の材料のみを使用して配合をたてる試みもやられてきています。
 又皆さんは進出した工場において、工場管理にはかなり苦労し、徐々にそのノウハウを貯めつつあるようです。意外と苦労されているのは、日本からの派遣する駐在員の人事です。どのゴム会社も現地での言葉、工場管理、材料、機械、そして会社経営に至るまで、これらをすべてカバーする人材というのは、沢山いる訳ではありません、初代の駐在員はなんとかなるのですが、その方々が数回交代となると、何組もこのような優秀な海外工場要員を確保する事が難しくなってきているのです。更にどのゴム会社も次々と海外進出を進めた結果、あちこちの海外要員が必要となり、同じ人がアメリカ工場の駐在を終えた後、すぐまたアジアの別の海外工場に転勤するとか、そういった面があり、本社のトップは、その駐在員のやりくりに頭を痛めている様です。かつて私が米国の駐在員をしておって、アメリカに進出したゴム会社30社を訪問し、色々お話を伺った経験があります。どこも材料、工場管理、日本から持って来た機械のメンテナンス、そして次期駐在員の人事問題、そして現地の事情をなかなか理解してくれない本社との折衝に苦労されていた様です。ここにきて、各国に進出したゴム会社は社内でそのノウハウを貯めつつあり、それが会社の大きな資産になってきたようです。
 ここ一年を見ますと、中国への進出ラッシュがすさまじく、また日産、トヨタ、ホンダが、中国の現地自動車会社との提携をより進めました。当社の運営していますインターネットゴム総合サイト「ラバーステーション」でも、中国への日本自動車メーカー進出マップを最近作成しましたが、タイヤ、自動車部品、OA部品では、この中国進出が大きな動きとなっております。それに従い、材料メーカーもマスターバッチメーカーも同じくその進出に歩調を合わせているようです。
 これからも、世界のボーダーレス化、グローバル化、世界各国有力企業とのアライアンス化といった事がますます進むと思われます。最近加藤事務所では日本語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、オランダ語、スウェーデン語の9カ国語の世界ゴム用語辞典を作成中であります。今後も世界ではばたく日本のゴム人が益々活躍する事を願うばかりであります。



加藤事務所では、ラバーダイジュスト社発行の月刊ゴム・プラスティック関係の総合技術誌「ポリマーダイジュスト」に、「ラバー情報ステーション」のタイトルで、ゴム業界に関する情報コラムを平成14年5月より連載しています。連載後6ヶ月を経たコラムはここに公表しております。最新号の記事は、ラバーダイジュスト社よりポリマーダイジュスト誌をお買い求めください。(ラバーダイジュスト社 電話03-3265-4840)

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更新日2003/07/11
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