.平成14年9月号コラム
タイトル: 環境に優しいゴム材料
今回は環境に優しいゴム材料についてお話をしたいと思います。
最近世の中では環境に優しい製品を作ろう、環境に負荷をかけない物作りをしようという動きがあります。このゴム業界を見回してみると、合成ゴムを中心とする主原料は石油から生産されています。しかしこの石油は資源としては枯渇する恐れもあり、この限りある資源を有効に活用していこうという大きな流れがあります。そのために石油以外の原料からゴム製品が出来ないかという開発がすすめられています。また一方、石油原料からゴム製品を生産するという事は、この石油を原油から精製しナフサ等の化学製品を経て合成ゴムになる過程で、エネルギーを消費し多量のCO2ガスを発生させています。つまりCO2ガスを地球上に排出しながら合成ゴムを生産しているともいえましょう。地球温暖化の問題を考えた場合、石油以外の原料から出発して省エネルギー型でゴム製品が出来ないかとのアイデアが求められています。確かに天然ゴムは、CO2と水から光合成から出来ている環境に優しい原料です。さらに補強剤であるカーボンブラック、シリカも考えようによっては環境に優しい原料となりうる事が出来ます。
海外でも脱石油ゴム材料の開発が始まっています。米国のグッドイヤー社は2001年春にトウモロコシであるコーンスターチからタイヤの補強剤フィラーを作り、このコーンスターチフィラーを使ったタイヤBioTRED技術を発表しました。昨年から欧州ではこのとうもろこし、コーンスターチフィラーを使用したタイヤGT3シリーズが発売されています。確かにこのトウモロコシ入りタイヤが何処までタイヤの性能を高めたかについては、詳しい発表がありませんが、グッドイヤー社も環境に優しいタイヤを作ろうとしてその技術を開発してる事は間違いないようです。また最近日本で、お茶の原料「トチュウ」がゴム分を合成する遺伝子を持っていると発表されました。
加藤事務所ではそのホームページwww.rubberstation.comに石油以外の物質を出発にしたゴム材料リストを発表しております。ここにそのリストを載せました。これらは石油以外の材料でゴム材料、ゴム配合材料になりうる物質をリストしたものです。これを見ると天然ゴム、植物油、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ステアリン酸、こういった物資地を原料に石油以外の物質をベースにゴム製品が出来そうです。加硫促進剤と老化防止剤だけはどうしても石油化学を中心とした化学物質を使用する事になりますが、全体で重量比で95%までは、天然品のゴム材料を使ったゴム製品が出来る事になります。ゴムの物性を向上させる事も大切な事ですが、今後はエネルギーの大量消費を避けて、地球上のエントロピーを増大させないようにする、そして地球の生態環境を変えずにエコロジーと共存する、そういったゴム製品が求められる時代が来るかもしれません。そのためにゴム企業ではちょっと発想を変えて、天然品のゴム材料、といったキーワードで開発を進めるといった事も必要ではないかと思います。
環境に優しいゴム材料の例;
1 |
天然ゴム |
26 |
ハートグレー |
51 |
シラン系カップリング剤 |
2 |
再生ゴム |
27 |
タルク |
52 |
酸化カルシウム(脱水剤) |
3 |
植物性オイル |
28 |
チタン酸カリウム |
53 |
貝粉 |
4 |
パームオイル |
29 |
珪藻土 |
54 |
シリコーンゴム |
5 |
ひまし油 |
30 |
カオリン |
55 |
コーンスターチ(でんぷん) |
6 |
綿実油 |
31 |
硫酸バリウム |
56 |
エンジンオイルの廃油 |
7 |
あまに油 |
32 |
ゴム粉(40メッシュ以上細かい 冷凍粉砕品 |
|
8 |
なたね油 |
33 |
エボナイト粉末 |
|
9 |
大豆油 |
34 |
セラミック(セラック中の分泌
樹脂) |
|
10 |
やし油 |
35 |
木粉 |
|
11 |
落花生油 |
36 |
やしがら |
|
12 |
トウモロコシ油 |
37 |
コルク粉末 |
|
13 |
木ろう |
38 |
セルロースパウダー
(KCフロック) |
|
14 |
天然系ステアリン酸 |
39 |
グラファイト |
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15 |
天然ラテックス |
40 |
ガラス繊維 |
|
16 |
硫黄(石油からではなく、
天然ガスや鉱山からの硫黄) |
41 |
雲母粉 |
|
17 |
松やに、ロジン樹脂、テルペン
樹脂 |
42 |
マイクロガラスビーズ |
|
18 |
パインオイル、ジペンテン |
43 |
重曹(発泡剤) |
|
19 |
パインタール(松根油)、
トール油(木材油脂) |
44 |
ステアリン酸亜鉛 |
|
20 |
サブ |
45 |
ステアリン酸バリウム |
|
21 |
酸化亜鉛 |
46 |
シリコーンオイル |
|
22 |
タイヤを蒸し焼きにして製造した活性炭 |
47 |
脂肪酸エステル |
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23 |
ホワイトカーボン(シリカ) |
48 |
天然系高級アルコール |
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24 |
炭酸マグネシウム |
49 |
酸化アンチモン |
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25 |
炭酸カルシウム |
50 |
水酸化マグネシウム |
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加藤事務所では、ラバーダイジュスト社発行の月刊ゴム・プラスティック関係の総合技術誌「ポリマーダイジュスト」に、「ラバー情報ステーション」のタイトルで、ゴム業界に関する情報コラムを平成14年5月より連載しています。連載後6ヶ月を経たコラムはここに公表しております。最新号の記事は、ラバーダイジュスト社よりポリマーダイジュスト誌をお買い求めください。(ラバーダイジュスト社 電話03-3265-4840)
更新日2003/07/11
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